採用より効く。“人が辞めない会社”の作り方
上司の話し方が、職場を安定させるポイント
こんにちは。産業医の岡山メディカルパートナー、健康経営アドバイザーの矢田です。みなさんの会社は人材不足でお悩みではありませんか?
採用が難しい時代、「人を集めること」以上に大切なのが「辞めない職場」をつくることです。求人に力を入れても、入社後すぐに辞めてしまえば、コストも労力も振り出しに戻ってしまう。だからこそ経営層の方々には、“採用より先に定着”という視点を持ってほしいのです。
では、人が辞めない会社は何が違うのか。私が見てきた限り、共通点の一つは「上司の関わり方が安定している」こと。つまり、現場の空気が落ち着いていて、部下が相談しやすい雰囲気が保たれているのです。
ただし、ここで誤解してほしくないのは、管理職が厳しくしてはいけないという話ではありません。成果を求めるのは当然ですし、責任も重い。だからこそ、言いたくなる瞬間があるのもよく分かるのです。
わしも昔は、期待しておる部下であればあるほど、つい声が大きくなったものよ。
「なんでできんのだ!」「もっとしっかりせい!」――そんな具合にござる。叱った直後は、こちらも腹の内が少し軽くなる。しかし、後から気づくのじゃ。部下の動きが固くなり、報告が遅くなり、相談が減っていく。忍びの務めで言えば、これは致命傷。「報が来ない組織」は、静かに弱っていくのでござる。
職場でも同じです。叱責が増えると、短期的には動くことがあっても、長期的には「相談しない文化」が育ちます。ミスを隠す、黙る、挑戦しない。結果として、離職の芽が育ってしまう。つまり、問題は“叱ること”そのものよりも、叱り方が「未来」につながっていない点にあるのです。
そこで鍵になるのが、叱責ではなく「期待の伝え方」。
叱責の目的は罰ではなく前進。ならば、上司の言葉は“刃”ではなく“道しるべ”であるべきです。
ポイントは、期待を「わかりやすく」伝えること。
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何を(行動)
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どこまで(基準)
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いつまでに(期限)
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困ったときは(相談先・支援)
この4つが揃うだけで、部下の不安は驚くほど減ります。
なるほど、具体的なポイントを伝えることが肝要でござるな。抽象的な指示は迷子を生み、具体的な期待は安心を生む。わしも肝に銘じておかねばならぬな。
ここからは、使いやすい「言い換え例」をいくつか紹介します。
① 抽象で責める→具体で導く
×「ちゃんとやって」
○「手順①②を確認して、チェック欄に✓を入れて。今日15時まで」
② 人格に寄る→行動に戻す
×「なんでできないの?」
○「どこで止まった?資料のどの部分が分かりにくかった?」
③ 結果だけ叱る→プロセスを整える
×「ミスが多い!」
○「ミスが出やすい工程を一緒に洗い出そう。次は防ぐ手を決めよう」
④ 一方的に詰める→相談の入口を作る
×「考えろ」
○「10分でいい、一回相談しよう。選択肢を一緒に並べる」
⑤ 圧をかける→期待と安心を同時に渡す
×「次は失敗するなよ」
○「期待してる。だから最初は確認しながら進めよう。困ったらすぐ言っていい」
上司が伝えるべきは「怖さ」ではなく「期待の形」。部下は、“何をどうすればいいか”が見えると動けます。逆に、見えないと不安になり、黙り、やがて離れていく。会社の空気は、日々の言葉でつくられていくのです。
人手不足が続き、思うように採用が進まない今の時代。だからこそ、これからの企業にとって重要なのは「新しい人を入れること」以上に、今いる人が安心して働き続けられる職場をつくることです。
人が辞めない会社には、特別な制度があるわけではありません。
日々の声かけや関わり方の中で、「自分は期待されている」「ここで頑張っていいんだ」そう感じられる空気があるかどうか。その積み重ねが、職場の安定につながっていきます。
岡山メディカルパートナーでは、経験豊富な産業医が企業に寄り添いながら、メンタルヘルスケアや健康相談だけでなく、従業員の定着率向上を見据えた取り組み、管理職向けの関わり方の支援やハラスメント研修など、幅広いサポートを行っています。
「人が辞めない職場をつくりたい」そう感じたときが、見直しのタイミングです。どうぞお気軽にご相談ください。それでは、ご安全に!